クロネコの塵壺

自分の頭で考えて生きていこう

市ヶ谷弘治著『社会を変えるアイデアの見つけ方』を読んだ感想

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書店で偶然見かけた本です。面白そうだったので購入してみました。

 

この本は、元ソニーの技術者で「空調服」の生みの親である市ヶ谷弘治氏が、アイデアの見つけ方、育て方、実際に実現するまでの方法論等について記した本です。

 

空調服」は、まさに「社会を変えるアイデア」だったと思います。冷却ファンが付いている作業服は、すでに市民権を得ていると思います。市場規模は、100億円に迫る勢いだとか。

 

もともとは地球温暖化対策の懸念もあって冷却関係の研究を始め、「冷却することはエネルギーを取り去ることであり、本来エネルギーを必要としない」というアイデアを得ます。

 

そこから「部屋全体を冷却しなくても、人だけが涼しければいいこと(生理クーラー理論)」に気づき、この理論を応用した「空調服」を開発します。

 

驚いたのが、「空調服」の事例紹介は少しで、これから新しいことに取り組もうとする起業家や技術者向けに、創造するとは何か、というもっと大きな視点で本質的なことを語っている点でした。

 

本の中でも書かれていますが、若い人に読んでほしいということで優しく書かれています。ただ、上述した通り、その内容は深く、本質的なものなので、目から鱗が落ちるというか、感心する部分が多くあります。

 

イデア本というと、よく発想法の部分が取り上げられます。しかし、発想することや創造することとはどういうことなのか、創造力の磨き方、創造したアイデアの育て方、うまくいかなかった時のアイデアのメンテの仕方など、中長期的な視点で語る本は少ない気がします。

 

そして、この本は、アイデア本であると同時に考え方の本でもあると思います。これからの時代、単純労働はAIやロボットに代替されていくので、人間はよりクリエイティブな作業が求められるでしょう。

 

学校教育も黒板の板書をただ書き写すタイプの知識詰め込み型からアクティブラーニングのような自分で課題を見つけそれに自主的に取り組むような能動的なものに変わってきています。

 

創造力を磨くためにはどうすればいいのか。

 

この本では、課題という動機を見つけること、子供のような好奇心を持つこと、調べる前に考えること、当たり前を常に問い直すこと、手を抜くことを考えること、などが挙げられています。

 

特に「調べる前に考えること」は、重要な考え方だと思います。近年は、何でもグーグルで調べられますが、そのデメリットはきちんと把握しておくべきだと思います。

 

すぐに調べるという行為は、その分だけ思考の時間を削ってしまいます。加えて、真偽が不明確な玉石混交のネット上の知識は、誤った思考を生み出してしまう可能性があります。そして、知識を得てしまうと、それを信じてしまい情報の正確性を検証するという作業をしなくなります。筆者は、この様子を数学の問題に例え、数式を書かずに答えをカンニングしている状態、と指摘しています。

 

あたなが本当に創造力を磨きたいと思うなら、著者の以下の言葉が役に立つでしょう。

 

もし本当に新しい発想や価値を生み出したいのならば、まず考えてから答え合わせのために調べるというのが順序としては正しいでしょう。

 

 

『社会を変えるアイデアの見つけ方』(市ヶ谷弘治著、クロスメディア・パブリッシング、2018)p.55

 

この本は、起業家や技術者向けの本だと思いますが、中学生や高校生くらいの年代の人にもオススメの本だと思いました。

 

学問をする前にこういう本を読むことで、調べることや学ぶことが実はもろ刃の剣であること、発想の源泉として知識は必要だが、その知識とは具体的にどういうものなのかなど、これからの時代を生き抜く上で必要になることを学べると思います。