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ジム・ジャームッシュ監督『パターソン』を観た感想

BullDog

一部で話題になっているジム・ジャームッシュ監督の最新作を観てきたので、今回はその感想を書きたいと思います。

僕はジム・ジャームッシュ監督の作品が好きで割とよく見ているほうだと思います。好きな作品を3つ挙げるとしたら、『ナイト・オン・ザ・プラネット』、『ブロークン・フラワーズ』、『コーヒー&シガレッツ』です。

この中で一番好きな作品は『コーヒー&シガレッツ』です。11個のショートストーリーを集めたオムニバス形式の作品で、登場人物(双子、従兄弟、久しぶりに会った友人など)がコーヒーとタバコを嗜みながら取り留めのない話をするという、なんともシュールな映像作品です。シュールすぎて好き嫌いが分かれる作品だと思いますが、会話の切り取り方や見せ方が秀逸ですし、他人の雑談を覗き見るドキドキ感と独特のユーモアを感じられる作品であることは確かで、とても中毒性の高い作品です。


前置きが長くなりましたが、今回の映画『パターソン』もジム・ジャームッシュらしさが溢れる作品だったと言えるでしょう。あらすじは極めて単純です。ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手の男の一週間を描くというものです。

この監督の作品を初めて観る人は面喰らうかもしれません。バス運転手の日常を描いて何が面白いのか、と。でも、これがこの監督のスタイルなんです。何気ない日常を丁寧に描写することで、普段気がつかないものをあぶりだしたり、目に見えないものについて考えるきっかけを提供しています。

読書で言うところの、行間を読む作業に似ていると思います。映像と映像の間にあるものから想像して何かを感じ取る。明確に言葉にできない部分もありますけど、心が熱くなったり、揺さぶられる瞬間があります。

この手法というのは、最初の監督作品『パーマネント・バケーション』の時から変わっていないように思います。初監督作品では、明確なテーマは設けないで、まずドットとドットを結び、その過程をある視点から映像化することで物語を構築しています。

今回の作品で言うと、ある月曜日から次の月曜日という2つのドットを結ぶことで、自然と物語が構築されていきます。何気ない日常もある視点で切り取り、積み重ねるとドラマになるということですね。

そして、この映画には、双子が多く登場します。深読みしすぎかもしれませんが、双子はある種のメタファーなのかもしれません。一見、同じように見える双子も話してみると実は全く性格が違う人間である。一方で、毎日同じように感じる退屈な日常も丁寧に観察してみると実は全く違う日常である。ジム・ジャームッシュ監督はそういうメッセージを伝えるために映画を作っているのかもしれません。