クロネコの塵壺

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アルファ碁マスターと囲碁棋士 柯潔(かけつ)九段との対決について思うこと

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先週、人類対コンピューターの最終決戦ということで、世界ランクNo.1の柯潔(かけつ)九段とディープマインド社が開発した囲碁AI・アルファ碁マスターが激突しました。僕は囲碁が大好きだし、テクノロジーも大好きなので大興奮していたのですが、囲碁のルールを知らない人やテクノロジーに興味がない人にとってはどうでもよいニュースだったかもしれません。

ただ、間違いなく歴史の転換点というか、客観的に考えてすごいことが起きているのは事実なので、思うところを少し書きたいと思います。

イベント概要

イベント名称は、Future of Go Summit(囲碁の未来サミット)です。開催期間は5月23日から27日までの4日間で、開催場所は、中国浙江省烏鎮です。Google中国囲棋協会浙江省体育局が主催しており、メインのアルファ碁マスターと囲碁棋士 柯潔九段の対局以外にもアルファ碁マスターと人間がペアになって戦うペア碁や複数のトッププロ棋士が相談しながらアルファ碁マスターと戦う相談碁、そしてThe future of AI forumというAIの未来を考える講演やパネルディスカッションなど盛りだくさんの内容です。

位置づけとしては、昨年3月にアルファ碁が世界トップクラスの囲碁棋士イ・セドル九段に勝利したため、より強い相手を求めて戦うこと、AIと人間との関係を考えることを目的として開催されたと思います。

アルファ碁が公の場で対局を行うのは、これが3度目だと思います。1度目は昨年3月のアルファ碁とイ・セドル九段との5番勝負。そして、年末年始にインターネット上に出現した謎の囲碁棋士マスター。これはディープマインド社のデミス・ハサビスCEOがアルファ碁の進化系だということを認めています。このマスターは、日中韓のトップ棋士に対して、なんと負けなしの60連勝という、とんでもない記録を残しています。この中には柯潔九段との対局も含まれています。

そういう訳で、今回の対決も人間側が不利で、勝算は極めて少ないと考えられていました。囲碁AIは人間のはるか先に行ってしまったのです。世界No.1の柯潔九段は善戦したと思いますが、結果は3戦全敗で負けてしまいました。

対決を観戦して思うこと

率直な感想としては、盤面が広く複雑な要素が絡み合う囲碁という競技で、これまで人間が何百年と積み上げてきたものをAIがたった2〜3年で追い越してしまったことに驚きました。AIは既に社会に浸透しつつありますが、これを契機にさらにAIが注目を浴びて活用が進むと思います。

そして、AIの打つ手が人間を超えている点について、どう捉えるべきかという問題があります。AIの学習速度は驚異的なので、これから人間がAIに勝つということは難しいでしょう。人間はAIに敗北したという事実を受け止めなければなりません。これからはAIをどう活用するかという段階に入ると思います。

AIは人間にとって単なる道具であり、それ以上でもそれ以下でもありません。この部分を間違えてAIに過度に依存したり、必要以上に神格化することはとても危険なことだと思います。

教育分野でのAIの可能性について

序盤から中盤にかけて、アルファ碁は人間の常識や既成概念を打ち壊すような独創的な手を打ってくるので、こういう部分から人間が学ぶことは多くあります。現に世界中のプロや囲碁ファンがアルファ碁の打ち方を研究しています。

例えば、昨年から今年にかけて日中韓のトップ棋士に60連勝した時の棋譜は、世界中のプロ棋士囲碁ファンに研究されています。アルファ碁先生という呼び方が示している通り、アルファ碁が登場する以前と以後では、囲碁の打ち方が革命的に変わりました。今までは悪い手や最善ではないと思われていた手が研究されていたり、常識外の打ち方が飛び出すようになってきました。

囲碁の世界では、AIから学ぶ時代になったのです。これはある意味すごいことですよね。AIは人間の思考の偏りを発見してくれるパートナーだと思います。 ただし、現在のアルファ碁は、打ち方の意図や根拠まで丁寧に教えてくれないので、人間側が解読する必要があります。ディープラーニングや強化学習という手法を採用していることもあり、アルファ碁が局面を分析して着手する過程を人間が理解しやすいように説明するのは難しいのかもしれません。その過程を人間に理解しやすいように説明できるAIの誕生が望まれます。

デミス・ハサビスCEOは、今回のAIは汎用性があると語っているので、いずれは学問分野にもAIが進出してきそうです。人間が科学や人文学といった学問を研究するのではなく、AIに研究させて、その過程や結果を人間が解読するという未来がやってきそうです。

技術の二面性について

技術には社会に良い影響を与える部分と悪い影響を与える部分があると思います。AIについても同じことが言えるのではないでしょうか。

AIのデメリットを少し考えてみたいと思います。現在の囲碁の分野のように人間がAIの思考過程をなんとなく追えるうちはいいかもしれませんが、AIとの差が開きすぎた時に人間が考えることをやめないか心配です。AIの思考過程を解読することを諦めて、ブラックボックスのままにしておくような気がします。

インターネット依存、スマホ依存ときて今度はAI依存という中毒症状が現れるかもしれません。AIには万能感がありますから、依存してしまうと気がついたら自分の意思や考えはほぼゼロになっていてAIの助言に従って生きているという、生きているか死んでいるかよく分からない状態になる可能性もありますね。

知らないうちに社会のいろんな分野にAIが浸透していくのも少し怖い感じがします。現在研究されている分野は、自動運転、医療、裁判、行政などの分野で、例えばAIが過去の判例データを基に刑期を決めるようになるかもしれません。冤罪もなくなるかもしれませんね。

ただ、気になるのはどこまでAIを信用できるのか、ということです。ソフトウェアにはバグがつきものです。コンピューターもミスをする可能性があるということを念頭においた方がいいでしょう。でも、人間もミスをしますよね。どっちがミスをする可能性が少ないのか。どちらを信用できるのか。僕は、人間の方がミスをする確率が高いとしても人間に裁いてもらいたいですけど。まあ、これは賛否両論、いろいろな意見があるところだと思います。