クロネコの塵壺

自分の頭で考えて生きていこう

最相葉月著『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』を読んで好奇心を刺激されると同時に胸が熱くなる

著者の最相葉月氏は、1963年生まれで兵庫県神戸市出身。ノンフィクションライター、つまり人物や事象を取材して事実をもとに本を書く人です。代表作に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞講談社ノンフィクション賞日本SF大賞日本推理作家協会賞星雲賞)などがあります。 僕は全く知らない作家だったのですが、この本が面白かったので他の著作にも手を出してみるつもりです。

さて、『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』は、題名の通り東工大での授業内容をまとめたものです。最相葉月氏は、池上彰氏からの依頼で東工大の非常勤講師になり、「生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか」という題目で計12回、4ヵ月間にわたり講義を行いました。その記録をまとめたのが本書になります。

授業では毎回、様々な分野の研究者(厳密にいうと研究者ではない人も含まれます)を紹介し、その生い立ち、研究者になろうと思ったきっかけ、主要な研究業績について説明します。2回に1回は研究者を実際に呼んでインタビュー形式で話を掘り下げ、最後に学生にメッセージをもらうのですが、そのアドバイスが人生経験に基づいた含蓄のある言葉で自分に響くものが多かったです。

研究者のジャンルも多様で、聴覚研究者の柏野牧夫先生、バイオミミクリー(生物模倣)研究のジャニン・ベニュス、生物発光研究の下村脩先生の話が特に印象に残りました。

本書の中で研究テーマの見つけ方を具体例を挙げながら4つに類型化しているのですが、それが大変興味深かったです。1つ目は、小さい頃から何らかのビジョンを持っている人。2つ目は、何がやりたいかは分からないけど、とりあえず入ってみてじわじわテーマに近づく人。3つ目は、セレンディピティ、つまり素敵な偶然や突然の幸運によってテーマを得る人。4つ目は、意図的に人とは違う発想をして差別化を図る過程でテーマを見つける人です。

本書は、人生のロールモデルがまだ見つかっていない中学生や高校生にとって非常に良い本ではないかと思いました。もちろん、僕のように人生迷走中の大人が読んでも得られるものは大いにあると思います。

僕は小さい頃から伝記や自伝が好きでよく読んでいたのですが、本書もそういう感覚で読むことができます。12人の研究者の人生を部分的に追体験できるという意味で非常に濃い本だと思いました。