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クロネコの塵壺

自分の頭で考えて生きていこう

読書猿著「アイデア大全」を読んで勇気づけられる

書評

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 前回のエントリーでは著者の紹介が主で書籍の内容については全く触れていなかったので、今回は読了後の感想を書きたいと思います。

動機

 まず、なぜ発想法に関する本を読もうと思ったのか。

 現在、私は社会人を経て学生に戻っていますが、あるメーカーに勤務している時に商品やサービスの企画に携わったことがありました。その時からアイデアを出して企画にまとめることが得意ではないと感じるようになり、学生に戻ってからも研究テーマを設定することに苦しむという経験をしています。

 つまり、自分なりの問題意識を持って現状を分析して、出てきた課題に対して解決策となるアイデアを考えて、という一連の流れがうまくできないということですね。金太郎飴のような凡庸な企画書は量産できるのですが、他人と差別化できるようなキラリと光るものを作ることができませんでした。自分はそういうことに向いていないと考えていました。

 上から降ってくる問題や言われたことには対応できるけど、自分の頭で考えて何かを切り開いていく、現状を変えていくということをやってこなかった典型的なグライダー人間ということですね。

グライダーと飛行機は遠くからみると、似ている。空を飛ぶのも同じで、グライダーが音もなく優雅に滑空しているさまは、飛行よりも美しいくらいだ。ただ、悲しいかな、自力で飛ぶことができない。

引用:外山滋比古(1986).「思考の整理学」ちくま文庫 p.11

 いわゆる独創的な発想(その人にとっては当然の発想なのかもしれませんが)をする人や自分とは違う切り口のアイデアを出す人々を見るにつけ、自分はそういう創造的な作業に向いていないのかもしれない、という思いを強くしていきました。

 ただ、何とかしたいという思いもあり、ここ2〜3年は「考え方」や「発想法」に関する本を見つけては読んでいます。もちろん、発想法は単なるツールなので、自分が取り組む分野に関して地道に知識を積み上げることやその分野の問題をどうにかしたいという情熱の部分が重要なことは理解しています。

 冒頭の問いに対する答えとしては、上述の前提を認識した上で、グライダー人間から脱して自分の頭で考えて自分の人生を切り開いていきたいと思ったからです。そのために先人達が考案したツールを学ぶ機会があるのなら、それは学んでおいて損はないだろう。そういう動機で本書を手に取りました。

本書の特徴

 本書の特徴は前文に書かれているとおりです。

 本書は実用書であると同時に人文書であることを目指している。

引用:読書猿(2017). 「アイデア大全」フォレスト出版株式会社 p.2

 実用書としての発想法に関する本は巷に溢れていますが、発想法の歴史的・思想的背景、他の発想法との関連について言及している本はこれまでになかったように思います。

 本書では発想法を「人間の知的営為の原点」と位置付け、広範な分野から42の発想法を紹介し、その手順、難易度、具体例、歴史的背景・参考文献などの補足が示されています。

 私が既に知っている有名な発想法もありましたし、全く知らなかったものもありました。例えば、5W1Hは誰でも知っている思考整理法ですが、その起源やネーミングまで解説されている本はあまりないでしょう。身体感覚を利用した発想法については全く知識がなかったので新鮮でしたし、これから取り入れていくつもりです。

読み方

 本書の読み方ですが、人文書として最初のページから読むのも面白いのですが、目次を見て気になった発想法からランダムに読んだり、巻末にアイデア史年表があるので気になった出来事に関連する発想法をピックアップして、そこから読むのもいいかもしれません。または副題に「The IDEA TOOL DICTIONARY」とあるので、発想法に関して何か調べたい時に辞書的に利用するのもいいかもしれません。

想定読者

 想定読者としては、クリエイティブな仕事をしている人だけでなく、自分自身を創造的な人間だと思っていない一般の人も対象にしています。本書の中にはそのような人に向けての応援のメッセージが散りばめられています。自分自身を創造性がないと思っている人でも発想法というツールを使いこなすことである程度の成果を残せることが、学術的な成果を併記しながら示されています。

 そして本書は実践書なので、読んで終わりではなく、現実の問題に当てはめてこそ価値を発揮するものだと思います。私も難易度の低いものから取り組んでいくつもりです。ただ、書籍の中で記載されている発想法を一読しただけで使いこなせるかというとそれは難しいと考えています。血肉化するには時間がかかると思いますし、読んだだけではきちんと理解できたか不安な発想法もありましたので、ぜひ直接レクチャーを受けたいと思う部分もありました。

まとめ

 これまでにない発想法に関する本を目指した意欲的な本ですし、その試みは成功していると思うので手元に置いておく価値はあると思います。発想法間の関連性を調べたい時、具体例を調べたい時には辞書的に利用できますし、人文書としても楽しめます。そして、私はなにより勇気づけられました。